仕事始めました! ⑭職場を辞める時

 やった事のないことをするというのは、二本足で立てると気付いた幼児がそろそろと歩き出そうとするようなもので、必ず転ぶ。どれだけ転ぶかはいろんな要因で個人差があり、案外直ぐに上手に歩けるようになる子もいれば、どんだけ転べば気が済むの⁉という子もいるだろう。私は明らかに後者である。

職場を変わってみたものの‥

 転ばぬ先の杖、という言葉もあるが最初の最初は「何が転ばぬ先の杖」かも分からない。で、転んだら痛いだろうなと思いながら、やっぱり転んで「痛いー‼」という繰り返し。これが仕事に及んでは周りも巻き込むので始末が悪い。

 これが嫌で、私以外の他の経験長い助産師は他科に手を出さないのかとつくづく思い知る。知らない土地に何も考えずにズカズカ踏み入っていけるおバカさんは私ぐらいのものか。

 初めて、このシリーズをお読みになった方は何の事やら分からないので説明すると、私は35年以上助産師をしていたところ、コロナ事情で非正規のリストラに会った後に何を思ってか訪問看護に身を投じた人間である。人の誕生ばかりを見てきたところが一転、今度は人生の終わりに近い方々ばかりを相手にするといっても過言ではない仕事をすることとなった。

 内科経験が全くない訳ではないが、10数年前のそれらは学生の時の実習のようにうっすらぼんやりした記憶の彼方。「看護の基本は一緒なのだから」と自分に言い聞かせても、それは自転車と自動車の運転ほど違った。道路交通法を知ってるだけではどうにもならないのである。

私の知ってるブラック職場

 前の職場はとても人の入れ替わりが激しかった。忙しい職場だし、産科経験が無ければやはりかなり最初は苦労するだろう。実際私がいた10年余りの間に就職しては辞めていった人は30人は下らない。(いやいや、看護職以外も含めると50人はいたと言う人もいた)ここまで来れば立派なブラックである。問題はトップがそれを問題と思っていなかったというところかな。

 新人の教育体制が整って無く、現場の責任者(ここでは師長ね。私らは『名前を言ってはならないあの人』と呼んでいた)は知らん顔で教育係に丸投げ、失敗した時だけ文句を言う。スタッフのほとんどが、この人のパワハラを避けるように仕事をしているというのを見れば、それで辞めずに残っていけた方々はかなり精神的に頑丈だったと思う。実際心身症の症状を呈して辞めた人もいたくらいである。(私は給与がソコソコ良かったので、それの我慢代と考えていた)

 さっさと辞めた方々を責めるつもりは無い。どちらかと言えば悪い職場だったのだ。(今はその師長は辞めているからそうではないが、コロナで給料が下がったらしい)これで鬱なんてなれば大変である。どこで見極めるのかは個人の自由だ。辞めて他の職場で幸せになっていればそれがいい。

 昨今ブラック企業がクローズアップされて、「ウチの職場はブラックかそうでないか」が意識されるようになった。厚生労働省ではブラック企業の特徴として
 ①労働者に対して極端な長時間労働やノルマを課す。
 ②賃金不払残業やパワハラの横行など企業全体の低いコンプライアンス意識。
 ③このような状況下での労働者に対する過度の選別。

 を挙げている。③は分かりにくいが同じ部署内での差別などのことだろうか。
 同じミスをしても叱責される人とされない人。同じ残業しても残業代のつく人と付かない人とか?

ブラックの理由は何だったか?

 う~ん、①②③全部見事にクリアだな。りっぱなブラックだ。残業代不払いだけはなかったが。
 ①に関しては業務自体ではそうなかったが、雇用者があずかり知らない所で『名前を~の人』が勤務希望の出し方が気に入らないスタッフに時間外に居残らせて勤務表を組ませるという罰(?)をやってたな。(もちろんその勤務表は採用しない。『私の勤務表を作る苦労を思い知れ』ってところ?)

 当然、職場の雰囲気は悪い。その人が出勤しない日・祭日がパラダイスに感じるほどである。数々の伝説の悪行は、皆なで「本ができるね~」と言っていた。私は身の程知らずにもよくたてついていろんな攻防があった。周りの人はオトナなんで子供のケンカに見えたかもしれないが。その話はまた別の機会に。

 何故、それほどまでの人が放置されていたか。

 一つは、パワハラで辞める人の多くが「辞める理由を言わないこと」
 『立つ鳥跡を濁さず』という諺があり、去る時はキレイに、という社会通念が日本にはある。「そこの職員を悪し様に言うのはみっともない」「もうどうせ辞めるのだから」「実際に何年も働ける人もいるのに耐えれなかった自分が恥ずかしい」などの理由があるだろう。

 しかし、中には自分が受けた苦痛に一矢むくおうとパワハラを訴えた人も数人いたという。
 だが「言われても雇用者(院長・男)が見て見ぬふりをしていたこと」が二つ目の理由と私は思っている。院長は決して悪い人ではなかったが(患者さんの間では優しい先生で通っていた)、いささか女性に対する理解も足りなければ、理解しようという努力もみられない。つまり『理解していない事に自覚がない』人だったのである。

 思うに女性にたいしてチョット歪んだ女性観をもっていたのではと。
 「女性とはいつも対立を起こすもの(文句は必ず出るもの)」
 「誰かをスケープゴートにして、団結するもの(その方がまとまる)」
 「短慮で、我慢が続かないもの(困難をすぐ放棄する)」

 そう思っている存在(女性)が「師長さんがヒドイんです!だから辞めたいです!」と言ったところで「ああ、またか」と思っただろう。「トップとは好かれないものだ」と逆に親近感も持ったかもしれない。
 もしくは自分こそ困難(面倒くさい事)から目を背けるタイプ?

 希望に胸膨らませて「この職場で頑張ろう!」と思って、慣れない仕事に数か月・数年耐えた挙句に(早い人は数日だったが)心折れて「もうダメ‥」と職場を去る無念はいか程だったろう。自分のプライドはペシャンコになり、心臓はしばらくはズキズキと痛み血を流す。何より辛いのは自己不信感が増すことだ。そういう人間を何十人も作り出した罪は大きい。

 結局、耐えかねた病棟スタッフの集団直訴により、パワハラ師長は辞職に至り「万歳!これで平和な職場だ!」と喜んだのもつかの間、襲ってきたコロナ禍による病院の経営危機(と院長は言っていたが?)。今も『その人』の噂は誰も知らない(というか誰も連絡取ろうとしてないのでは)。

 今度の職場は今日で丁度就職して1ヶ月になるが、失敗続きで凹むこの頃、ちょっと昔の事を思い出してみた。幸いなことに、今のところブラックな影は見当たらない(つまり辞める理由はカケラも無い‥)。問題は自分自身だけ。つまらないプライドは極力捨てて、看護学生に還ったつもりで目の前の課題に取り組むだけ、と言い聞かす毎日である。ふう‥。

 それではまたね。ごめんなさいませ。


 
 

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