訪問看護日記 3.おウチが一番!その②

 日本では独居老人が多いと言われる。人間はそもそも本能的に孤独に弱く、経済的にも二世帯が有利なのに海外より日本が多いのは家が狭いのと『同居』に悪いイメージが定着しているからと思う。

サザエさん家を見習え⁈

 それなら日本の国民的アニメのサザエさん。何故サザエさんちは二世帯が上手く行ってるのだろう?

 まずは家の広さ。現在戸建てでもマンションでも一般的な日本の子持ち世帯の住居は3LDK。3つしかない部屋は親の寝室と狭い子供部屋2つでお終いだ。二世帯できる広さとは程遠い作りである。勿論マイホームは高価な買い物なので広さは予算と考え合わせれば最低限、親と同居を考えなければハウスメーカーも一番の売れ筋はこれだ。サザエさん家のように親の持ち家、持ち土地なら増築もリフォームも可能だが親が持ちマンションならまず無理である。

 高度成長時代に公団タイプの間取りがイケてるライフスタイルの一つとして流行した。その結果、昔ながらの多用途可能の和室でなく居間(ソファーセットあり)と寝室(ベッドあり)の部屋構成、その代わりプライバシーは保てるよねのおウチが主流になったのだ。

 サザエさん家の見取り図がネットに出ていたが、平屋で4LDK(一応8畳の茶の間をリビングとして)。全和室で、昔は1畳も今より大きいし一部屋がそこそこ広い。縁側もあり庭も広い。台所も二人が並んで作業できる広さの6畳。そして私も子供の頃はそうだったが、カツオとワカメのように小学生の内は異性の兄弟であろうとも同じ部屋は当たり前だった。あの子たちは成長しないからあのままでいいのだがカツオも小学生5年、もうギリギリである。2~3年後中学生になったらどうするのかな、なんて考えてしまう。まあ、フツウは2階建てなのだから子供達は大抵2階部屋に追いやられるのだろうけど。

同居は自由がない⁈

 そしてサザエさんちの親同居が成立している一番の原因は、言わずと知れた『嫁姑問題』が無い事だ。じゃあ実の親と同居なら問題無いかと言えばそうでもないけど。血の繋がりが人としての礼儀や遠慮を無くして仇の様に憎み合ってる親子もいる。よく言う『親の仇』でなく『親が仇』ではシャレにならない。しかし実の親娘は長年生きてきた生活文化が共通しているから(例えば料理の味付けや生活パターンなど)そこは有利。あとサザエさんと舟さんの人の良さのおかげもあるかな。

 ところが世の嫁も姑も彼女らの様に人間性が良くは出来ていない。生活文化を否定されれば人間性を否定されたみたいでムカつくというもの。誰だって自分のやりたいように生活したいのよ。結婚は自由が手に入るチャンスじゃない?赤の他人に気を使うなんてまっぴら!そもそも職場の近くで住みたいし?食事もインテリアも理想があるしで同居なんてしたい人いるの?というわけだ。

 ごもっともである。否定なんてしない。私もそうだったし私の姑も同居経験者で嫁との同居は嫌がっていたので何の問題も無かった。だがその姑も齢90を超え、今は病弱の舅の介護で実家を離れられないが(本当はもうとっくに同居していい状態なのだが、多分舅がうんと言わない)独居になれば危うい。

 この間のGW連休に帰省した時姑が「自分一人になったら施設に入ろうかな」とつぶやいた(舅が先に逝く前提なのは親族一同おなじである)。やった!ここぞとばかりに「ウチに来てください!」と申し出た。私は今故あって一人で4LLDKの一戸建てに住んでいるのだから。住み慣れた自宅を離れる覚悟があるなら、十分プライバシーを保てながら同居できる。息子や孫の住居も近いというのもポイント高く、感触は良かった。私と相性がいいかって?施設に入っても相性のよいスタッフがいるとは限らないでしょ?ダメならいつでも施設を選べるしね。

高齢者は同居かスープの冷めない距離に

 何故こんなに義母との同居を望むのか。

 昨年実父の3番目の嫁さん(私は最初の嫁の子)が亡くなられた。父は十数年前に亡くなり、団地で一人暮らしをされていたが、7年前手術した乳癌が腰の脊椎に転移して(そこそこの痛みは日頃あったようだが)ある日激痛で家の中で一歩も動けなくなったらしい。電話する事もトイレに行くことも出来ず2~3日家の中で飲まず食わずで倒れている所をやっと発見され救急車で搬送された。たった一人で、動こうとしても動けない痛みと失禁の気持ち悪さの中、夜は真っ暗で。一体どんな気持ちだったろうと考えるとやるせない。「もうこのまま死ぬと思った」と言っていた。

 施設に入ればそういう事は無いだろう。そう思って子供は年老いた親を施設に入れる。それは間違いではない。同居がどうしてもできない場合もある。それでも私は施設を勧めない。なぜならこのコロナのせいで直ぐ会えなくなる可能性があるからだ。それぐらいならすぐ近くにアパートかマンションを借りてあげて毎日顔を出して短時間でも一緒に過ごす。いよいよ動けなくなるまでは。今は食事はどうにでもなる。調理ができなかったら高齢者用の宅配弁当もある。入浴が危なっかしかったらデイサービスや訪問の介護や看護サービスもある。75才以上の負担は1割だ(認定は必要。今後は収入にもよるけど)。

 そして何よりも認知症予防になると私は思っている。

 家族が近くにいると家族の為に何かしたいと思うもの。自分が誰かの役に立つ役割を果たせること、そして感謝される喜び。それが生きていく上でとても大切なのだ。施設は上げ膳据え膳だがそれだけに役割が少なく、しかも他人の為なのでモチベーションが上がりにくいのではないだろうか。

 緊急時はどうするの?施設の方が直ぐ駆けつけられるでしょ?と思われる方。それは本人が居室のコールボタンを押せたら、である。コールボタンに届かない場合も多い。以前ベッドから転落した人が動けずに朝までそのままだったというケースもあった。しかも駆けつけるスタッフが看護師でない施設もある。自宅でも契約しておけば持病を持っていても、緊急時には夜中でも私達訪問看護師は駆けつける。家族もわざわざ朝訪問しなくても毎朝の確認コールは1分とかからないでしょ。

 でも私はこの年になって同居をしたい。穏やかで優しい姑と和菓子とお茶を頂きながら「美味しいね」と言い合いたいのである。

 おウチが一番!の気持ちは変わらない。

 それではまたね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました