私は歴史小説が好きである。古代から産業革命の起きる近代までの、人々が今より遥に不便で不自由だった時代の物語。それはフィクションでもノンフィクションでも構わない。皆その不便・不自由を勇気と工夫で闘いながら生きる様が好きなのだ。
現代からは考えられない、不遇や不幸。蔓延する病気や戦争、身分や貧富の差。実際はそれで命を落とした人々は数えきれないだろうが、たいてい主人公は「数奇な運命に流され続けて」いない。結末はどうであれ、もがきながらも闘う。そこに勇気をもらうのである。
「痛い」が怖い⁉
ところが映画などで映像化されるといけない。
私は「痛いシーン」が極端に怖いのだ。
人間の歴史は戦争の歴史である。歴史もので戦争シーンの無いものは少ない。数少ない恋愛ものぐらいだろう。おまけにそれは日本の娯楽時代劇と違って、きっちりリアルに作ってある。飛び散る血、開く傷口、砕ける骨‥。観てて痛い事この上ない。
また、拷問や処刑のシーンも数多く出てくる。小説ではそういう所はさらっと読み飛ばすが、映像だと目に焼き付いて数日間は私を悩ませる。まったくの架空の事でなく、昔は実際に行われていたという事実で感じる心臓を押し潰されるような胸苦しさ。
ドキュメンタリーでもそうだ。10代のこ頃テレビで、ホロコーストや原爆の記録映像などを初めて観たあと3日位夜眠れなかった。日本の昔のキリシタン弾圧や歴史上の虐殺の数々。
人間が人間になぜこんなに残酷になれるのだろう。ほんの2~300百年前は死刑は公開もされ、庶民はこぞって見に行ったという。フランス革命時のギロチンもそうだ。古代ローマで行われていた闘技場での殺し合いも市民の娯楽だった。
うっかり中世ヨーロッパの魔女裁判の本を、怖いもの見たさでちょっと覗いたあと物凄く後悔した。
その中でダントツに怖いのが火刑である。「薔薇の名前」「ジャンヌ・ダルク」「ラストオブモヒカン」など小説では有名で、読んでるものだからうっかり映画化されたものを観てしまい、そのシーンは今も思い出す度苦しくなる。
痛いのは肉体だけにとどまらない。主人公が恥をかいたり傷つけられるシーンも痛い。(これはなぜか主人公以外に何があっても平気。感情移入してるせいか?)
当然、今は防衛策をとる。そういうシーンになったら目をつぶり、耳を塞いでサルになる。観てしまったらうなされるのは必定。人間って思い出したくないって思うほど心に定着してしまうからね。
もちろんホラーやスプラッタなどもっての他。何故あれらを好んで作ったり観たりするか理解できない。あまりに評判になったのでまたうっかり「リング」を観てしまったら、悪霊が怖いより「悪霊になる女性が井戸に落とされ、死ぬ間際に這い上がろうと手の爪が全部剥がれた」事のほうがずっと心に痛く残ってしまった。そうなるまでにどれだけ絶望しただろう、と。
そういえば、子供のころから怖がりで、特にしゃれこうべ(頭蓋骨)が異常に怖かった。
それがたとえ、海賊の旗のドクロマークでも。小学校の登校途中にその絵のある映画宣伝ポスターを見ない為、遠回りをした覚えがある。また、人体骨格がある理科のページや、古代人の骨の化石が載っている世界史のページを開かない様にテープで閉じていた。
さすがに大人になってからはそうでもなくなったが。
そんなんでよく医療の道を選んだものである。
確かに今でも注射は苦手である。針を人に刺すなんて、しないで済むならしたくない。
不思議と自分には平気で刺せる。職場で翼状針(チョウチョみたいなやつ)を使って自分の手の甲を刺して採血や静脈注射をしたことは何度もある。(以外と想像より手の甲は痛くないと思うよ?)
痛くない注射は何故できないのだろう?注射が痛くなくなれば、医療は随分楽になるのだが。
『痛覚をマヒさせたら静脈注射などは血管から薬液が漏れた時に分かりにくいし、神経麻痺の予防のため』というが、何か方法はあるはずだ。未来はきっと「昔の人はよく痛い注射を我慢したよね」と言われる時代が来ると信じている。今の手術麻酔のように。(手術は痛そうにしてないから平気である)
「怖い」にどう対処する?
世の中には身体も心も苦痛で満ちているのに、目や耳を背け続けて生きていくことは逃避行動でイケナイ事かもしれない。しかし今の私にはなるべく心にそういうモノを入れずに、歴史小説を読んで勇気をもらい続けるしかないかな。
これも一種の「恐怖症」なのか。
「恐怖症」は自分ではどうにもならないよね。いろんな恐怖症がある。高所恐怖症や閉所恐怖症のような場所的なものや、蜘蛛や爬虫類など生き物に対するものなど。
どうして怖いかと訊かれても答えられない。怖いものは怖い。極力避けて生きるだけだ。誰にでも理由なく怖いってモノは一つや二つあるんじゃないかな。(ちなみに私は毛虫もダメ。子供の頃は毛虫が落ちてきたら、と思うだけで木の下に行けなかった)
原因は幼少時のトラウマ説や前世の記憶説とかあるけど。水が怖い人は前世に溺死していたとか。さしずめ私は前世で魔女狩りにあって火刑なっているかもね。毛虫がダメなのは‥。昔「毒虫の刑」と言うのがあったらしい。毒を持つ虫(毛虫、ムカデ、サソリなど)や毒蛇を集めた中に受刑者を投げ込むってやつ。それかねぇ?まったく人間の残酷さって‥。悪魔は言う「一番残酷で怖いのは俺たちでなく人間だ」と。
人間が輪廻転生するかは賛否両論あるが、外国ではドラマとかでセラピストが退行催眠をかけて、過去(生まれる前まで)遡って記憶をさぐるというシーンが出てきたりする。怖い理由がわかると怖さが軽減するという。ホントかな?私はそんな辛い過去は思い出したくないけど。
前世が分かるという占い師さんが「悪い前世が見えても、それは本人に絶対言わない」と言ってたな。
そりゃそうでしょ。誰も自分が犯罪者だったなんて知りたくない。
私の前世は直近は大戦中のフランス人で、その前はイギリス人だったそう。それが本当なら前世は何処の国人でもあり得るわけで、世界中の人に人種差別や宗教の争いなんて無意味だと分かるんだけど。
仏教では前世は動物や虫かもしれないのだ。肉なんて食べれなくなるね。
さしあたって、今の私の恐怖は来週の予約の歯医者である。奥歯に見つかった虫歯の治療が始まるのだ。それまでに何から勇気を貰おうかとオロオロと今模索している。
それではまたね。ごめんなさいませ~。


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