母乳育児の為に出来ること‥乳首の準備、分娩後の初回授乳、ミルク中心からの移行方法などを説明してきた。ほどんどのママの母乳が直ぐには出ないことから、最初の数日~数週間はミルクに頼らざるを得ないのが現状だ。
しかし、どうしてもミルクは飲ませたくないというママもいる。
最初からの完全母乳希望である。
結論:初期の完全母乳チャレンジは条件と覚悟が必要
ミルクを避けたい理由
理由は様々。ママ自身にミルクアレルギーがある。乳糖不耐症など。
両親や上の子に喘息などのアレルギー疾患がある。
上の子に食物アレルギー(アトピー性皮膚炎など。)
などで、赤ちゃんのアレルギーを心配するものから、ミルクは身体に悪そう、出来るなら母乳だけでいきたい、というどちらかと言えば派まで。
ラ・レーチェ・リーグ(国際母乳連盟:発祥・本部アメリカ)がWHO/ユニセフと共同で提唱する「母乳育児の為の十箇条」というのがあり、その中の一つに「母乳以外のものは飲ませないようにしましょう」がある。
ラ・レーチェ・リーグは、女性の社会進出がめざましい1960年頃、ミルク育児が主流になってしまったアメリカがその状況に警鐘を鳴らし、活動が始まった非営利団体。
日本にもNPO法人が有り、母乳育児の推進活動が行われている。
私がまだ新米助産師の頃、病棟にこの十箇条の大きなポスターが貼ってあって、母乳推進には大いに賛同するも、この項目だけは「無理じゃないか?」と感じていた。
しかし天下の国際団体のおっしゃることである。
『海外ではそれはできるのかなあ』と漠然ととらえていた。
お産直後からの母乳分泌の実態を知っているからこそ『日本じゃ難しい』と思うのであって、あまりよく知らない人や初産婦はこのまま信じちゃうかも、と思った覚えがある。
そう、それくらい「母乳だけ」は難しい。特に初産婦は。
生まれてから8時間後から授乳開始だが、もうその時には5~10cc程度の母乳分泌がある、が条件だ(しぼればタラタラ流れる程度)。
皆無ではない。が私が思うに1割以下?
「出るから吸わせるのではない、吸わせるから出るのだ!」
はいはい、その通りです。ちゃんと吸わせて頂きますよ。吸わせるのがダメとか、無駄とか言ってるのではない。
でも出ないものは出ない。赤ちゃんは満たされない。
また吸わせることに一生懸命なりすぎもデメリットががある。
良く吸わせる&5%ブドウ糖水を追加する方法
赤ちゃんは汗もかけばオシッコもする。少なくとも水分は必要だ。
とくに身体の80%が水分(大人は普通70%。シニアは60%)なので、脱水をおこしやすい。よく泣いて喉も乾くだろう。たまに、まだ羊水が胃の中にあってオエオエしてる子もいるが。
ということで、ミルクは出来るだけ飲ませたくない派のママには5%ブドウ糖水の追加を勧めている(母乳以外のものであるが)与える量の目安はミルクの時と同じ。
「うちの病院は完全母乳を推進してます!」の所はだいたいそうではないだろうか。
赤ちゃんが乳首を吸う刺激でママのオキシトシンとプロラクチンの分泌増加が期待できる。とくに母乳の量に関わるのはプロラクチンだ。
だからお産後は早めに赤ちゃんを側に置いて泣く度に吸わせましょう(早期母児同室)という方法もある。(普通は翌日からの母児同室が多いと思うが)
お産後〇時間以内に〇回以上吸わせましょう、と書いてあった母乳育児書も昔あった。
そりゃ、乳腺の開口は赤ちゃんが吸うことで進むし、プロラクチンの分泌は増えるだろう。だがこの方法も条件付きだ。
1.お産でママの疲労が著しい場合は避けたい。初産で長時間不眠不休で頑張って産み、その後の処置に耐え、あまり休めなかったママにはちと酷だ。出血が多い、血圧が高いなど安静が必要な時も論外。
2.昼間にお産したら授乳が始まる8時間以降は夜中に突入する。たとえブドウ糖水を与えても腹持ちが悪いので、赤ちゃんは1~2時間ごとに泣いたりする。お産当日の初産の夜間同室するところは無いだろうが、まずママは寝れない。
3.妊娠中からから乳首のマッサージをして鍛えて(?)たり、体質的に皮膚が丈夫なら良いが、最初から頻回・長時間(分泌がまだ殆ど無いうちは片方5分でよい)吸わせていると乳首が傷み(吸い方が、浅かったりして悪いと尚の事)切れる。乳首の形にやや問題ありや皮膚が弱そうな人は慎重に進める必要あり。
私はいわゆる短乳頭でおまけに小さくて、乳頭が小指の第一関節の半分位しかなかった。当時は乳頭保護器などなく、無理やり吸わせていたらしっかり切れた。
乳首の皮は薄く、唇と同じく敏感だ。唇が切れたことある?あのピキッとした痛みが乳首にくる。吸われ始めに歯を食いしばる。それも1日1~2回ならともかく、8~10回。(どんな拷問だっての)1か月健診位になって子の口がそれなりに大きくなり、深くくわえられるようになってやっと楽になった。
4.もちろん赤ちゃんの状態に問題なしで。
以上の心配が無ければチャレンジしていいと考えている。
後はアレルギーの心配との兼ね合いだ。
出来るだけ母乳だけでいきたい(ブドウ糖水はいいがミルクはイヤ)という希望があり、この方法をお勧めされたら、けっして楽では無いがそれをわかった上でなら勇気を持ってやってみてもいいのでは。確かに母乳が最短で出る可能性がある。
今まで見てきた中でクリアできそうだったのは、お産直後にはもう母乳分泌が見られる経産婦か、若いママ(20歳前後)が多い。
昔は16~18歳でお嫁入り、という時代があったが、成程、18~20歳ぐらいが生物学的にはお産に最適な年齢だ。これ位の年齢は組織が柔らかく伸びてお産もスムーズで、キズもできにくいし(治りも早い)、母乳も直ぐに出る。しかし現代では精神的・社会的には難しいね。
さあ、あなたはミルク併用?ミルクなしチャレンジ?どっちかな。
産院によっての方針もあるから事前に要確認。
選ぶのはあなただ。メリット・デメリットをよく理解した上で決めたのなら、後悔は少ないだろう。それではごめんなさいませ。


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