かなり以前に『芸能人は歯が命』という歯磨き粉か歯ブラシのCMがあって、イケメン俳優が真っ白い歯をみせてニカっと笑うものがあった。勿論歯が大事なのは芸能人だけではない。動物が長生きするためには歯の健康は必要不可欠だ。野生動物なら食事ができなくなればもうアウトである。いやいや、人間は歯の治療ができるし、最悪歯が無くても今や噛む必要の少ない軟らかい食品は巷に多く存在し、実際高齢者は食べているだろうからそう問題はないのではと思っている?
しかし大事なのは歯の直接的な機能である食べ物を嚙み砕くことではなく、噛むという行為自体である。
私の歯がボロボロになった理由
私は今までの人生の大半は歯のメンテナンスには無関心でぞんざいだった。夜勤をしていた頃は、眠気やキツさをごまかす為に仕事中は断続的に飲食していた。勤務に余裕がある時は夕食後と朝食後に歯磨きはしたが(夜勤は夕方5時ぐらいから翌朝10時頃まで。勤務時間は9時までだがそこで仕事が終わらない事も多い)忙しい日はささっと食べるだけで歯磨きなんてカットなんてこともよくあった。夜勤から帰れば身体と頭はくたびれ果てているのにまだ神経だけは尖ってて、それを宥めるためにコンビニでアイスやスイーツを買いこんで食べてから寝ていた覚えがある。その時も歯磨きをしていたが、問題はフロスも歯間ブラシも使っていなかったという事だ。
今では周知されているが、歯ブラシだけでは4割もみがき残しがあるという。当然歯垢は残って虫歯や歯周病になるのは必須である。私は何本も自分の歯を犠牲にしたあげくにやっとこの事を理解して、フロスや歯間ブラシを使うようになった。夜勤も含めフルタイムでの仕事から解放され、思考停止から抜け出してからはまだ5年も経ってない。今は差し歯12本、銀色にきらめく歯は7本。既に完全な自分の歯は半分以下(涙)。ちなみに保険適用で良く使われる銀歯は身体に有害ということで欧米ではもう使われていないそうだ。この医療が日進月歩の時代に歯科技術もかなり進んだのに歯科の保険適用は何十年も変わらないと、ある歯科医がYouTubeで嘆いていたな。
高齢者の多くが無くすもの
私の祖父母は早くに鬼籍入りで母は早くに亡くなり、再婚した父ともあまり会っていなかった。何を言いたいかといえば、ここ十数年は職場は産科のクリニックだったので高齢者の生活に接する機会がほとんど無かったのだ。しかし1年5か月前この訪問看護の世界に飛び込んでからは高齢者三昧の毎日である。
悲しいかな、年を取れば多くのものを失うのは当たり前。数年前は当たり前のように出来てたことを一つ一つ奪われていく。インプラントができるお金持ちは別として、フツウは差し歯対応が出来なくなれば部分入れ歯、そこで止まらなければ総入れ歯にと進んでいく。
訪問宅で良く目にしたのが『入れ歯』ケース。100均にも売っている。メガネケースや補聴器ケースと共に「何処にやったっけ?」と高齢者が探し回る感覚機能系3種の神器の一つかもしれない。病気で具合悪かったりして総入れ歯を外した状態でお会いすることも多いが、まさしく漫画に良くあるような口がすぼんで顔が変わる。しかし問題は機能面だ。私は入れ歯の経験がないからわからないが、どの程度しっかり噛めるのだろうか。
しっかり噛む事。その多方面への影響は計り知れない。
まずは食べ物の美味しさの一部。煎餅やポテチのパリパリ、揚げ物のサクサク感はまさしく噛めてからの食感である。または野菜や漬物、ナッツなどのポリポリ。すべては『美味しさ』の一部だ。『おいしさ』はとかく味だけが重要視されるが、食感、香り、音、見た目、温度などの様々な要因による結果である。食感はその中でも特に重要で、前述の食べ物がすべてふにゃっと軟らかかったらどうだろう。勿論舌でとろけるような美味しさもある。しかし軟食やきざみ食のような、全てが舌でつぶせる軟らかさの離乳食のような食事を余儀なくされている高齢者の方は、もう硬い物の食感を奪われた生活だ。
また噛む事によって唾液腺も刺激され分泌を増し、食物とよく混ざって消化を助ける。唾液は口腔内の感染予防効果もある。その上噛むことによって顔の筋肉を使い、肌の張りの維持、しいては言語能力の衰えも防いでくれる。そして脳への刺激(まあ、認知症に関してはこれだけで予防できるとは言い難い)。まだまだありそうである。
私が現在訪問している今年91才になるも元気なお姉さま(この間もお独りでデパートにタクシー乗りつけて買い物三昧)は「私50回は噛むわよ」と。う~ん、それは真似できないな。
異常が無くてもメンテナンスする時代
私の子供の頃は、というか私の家の教育水準では「歯医者は歯に異常があってから行くもの」だった。実際子供の頃に歯医者にかよった覚えはあまり無く、高校までは虫歯が1本も無くて表彰された覚えがある。逆にだからこそ私は歯のメンテナンスを学ばずに成長し、今はこの体たらくだ。痛みが出るほど進行した状態の虫歯になってからいくのだからその歯は削りに削られ、もうそのままでは役に立たない残骸に変貌する。そして神経に達した時の痛みを治療の器械の音から想像してしまい、その恐怖によって歯医者を避けるという負のスパイラル。それを繰り返しているのに「歯医者は歯に~」という刷り込みが最近まで抜けなかったのだ。また、30~40代は仕事や家事育児に忙殺されて歯のメンテナンスの時間が取れなかったのも事実だが。今は昔に比べて何と麻酔技術の発達した事よ。最近は歯科治療で痛い思いはしていない。メンテナンスの時の方が痛いくらいである。
ちなみに知人が先日「私のお祖母ちゃん(90才代)は総入れ歯で、入れ歯の時は合ってなかったのかあまり食べれなかったけど今は歯茎だけで何でも食べてるよ。ハンバーグもぺろり。」と言った。私が高齢になってもなるべく歯を無くさない様に努力しなくてはと話した後である。「だから歯が無くても大丈夫じゃない?」と。その方は入れ歯安定剤の臭いだか味とかもダメだったそう。歯茎だけでハンバーグ‥。それは丸のみに近い。孫と一緒の外食で無理されたか。もしそれが日常であれば胃の負担はいか程だろうか。それも心配だが、そう言う認識の知人の将来も心配である。
今こそ声を大にして!歯は自分では見えないのだ!次の3つをやってない人は直ぐにでも始めて!
①この長寿時代に歯を残したいなら定期的にメンテナンスに行くこと!
②そして歯間ブラシやフロスは子供の内から使う習慣をつけよう!特に就寝前。
③もちろん甘いものをだらだら食べたり飲んだりも避けたがいい。甘いジュースを時間かけてチビチビ飲んだり、喉が痛いからとのど飴を無自覚に何個も舐めてる人は多い。口の中の砂糖の停滞時間は少なければ少ないだけいい。
もう既にインターネットなどでは有識者たちも強く発信している。国も歯科の予防医療を推進し出している。フルタイムで仕事をしていたら難しいかもしれないが、今は休日診療している歯科も昔より格段に増えた。歯こそ無くなってから後悔しても遅いのだから。
それではまたね。ごめんなさいませ。


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