リストラ生活節約術⑱平等と公平の巻

「長幼の序」ということばを知っているだろうか。
「ちょうようのじょ」と読み方はそのままである。儒教の「孟子」の五輪(人間関係を規律する五つの徳目。他に父子の親、君臣の義、夫婦の別、朋友の道がある)の一つ。
私はこの言葉が子供の頃から大嫌いだった。なぜなら母が繰り返し私にそれを言い聞かせたからである。

先輩は後輩より偉い?

 私がまだ子供の時代(半世紀前)は日本は高度成長時代の幕開けで東京オリンピックがあり、それを観る為にカラーテレビがどんどん普及していった頃。
 企業戦士とそれを支える専業主婦がまだ一般的だった中、母は働いていた。
 何の仕事かというとサラリーマンの父が副業を始め、母がそれをサポートしていた。
 営業職で転勤族の父がどうして起業したのかは知らないが(その頃そんな事してよかったのか?)、忙しい父に代わってほとんど母がそっちの仕事を見ていて、夜帰りが遅い日も多かった。出張もあった。

 私には3才上の兄がいて、家でよく2人だけでいたのでしょっ中けんかをした。
 しばしば漫画などで妹を可愛がる兄が登場するが、そんなものトシが離れていて妹の容姿がいい時限定である。(と思う)
 今みたいに何でもコンビニにある時代ではない。母が数日帰らない日は兄妹で食材の買い出し、調理、片付けをしなければならない(父の帰りは毎日10時は過ぎていた。しかも酒臭い。時々絡まれるので、帰ってるく気配がしたら私達は直ぐに布団に飛び込んで寝たふりをした)
 兄は特売のチラシを見て私に買い物を命じる。簡単な調理はするが、後片付けも全部私に丸投げする。まるで私が自分の家来でもあるかのように。私はそれが我慢できなかったのだ。

 ある時(兄は中学生になったばかりの時だと思う)兄はチラシでラム肉が安そうだからと、私に買いに行かせた。私は千円札を渡され、兄としては当然おつりがあるはずと考えていただろう。しかしお肉屋のおじさんに「どれ位欲しいの?」と訊かれた時「これで」と千円札を渡してしまったのだ。
 当時ラム肉は安く、十数枚の分厚いラムステーキを持ち帰った私と兄は大ゲンカとなった。
 そしてその後、毎日ラムステーキが続き、今でもラムはあまり好きではない。

 しかしケンカとなっても圧倒的な体格差で、勝てるわけもない(本人はそれでも十分手加減したと言っている。グーで殴ったことはないと。しかしよくスリッパで叩かれた)
 私が兄の横暴さを母に泣きつくと、決まってこの「長幼の序」が出てくるのである。

「お兄ちゃんはあなたより年上なのだから、(敬って)言う事をききなさい。」
 納得できる訳がない。兄なんて私よりちょっと早く生まれただけではないか。
 学校等の運動部でも同様だろう。尊敬できる先輩ならまだしも、そうでなければ「数か月先に生まれただけであんなに偉そーに!」

終わらない男と女の利権争い

 もう一つ我慢できない事があった。
 母の言う「お兄ちゃんは男だから」である。
 今の若い人は想像できないかもしれない。家庭内で「男であること」だけで優遇されるのだ。
 男だからテレビのチャンネル権が先、男だからお風呂も先。何でも兄が先。
 年下であること、女であることは大人になるまでの長い間私にとっては呪いだった。

「私がお兄ちゃんより得することってあるの⁉」
 泣いて母に問い詰めたことがある。母は困って直ぐに答えられなかった。
 母だって明確な理由を持って言っていた訳ではない。だから子供には難しい中国の言葉で何とかしようと思ったのだろう。母自身そういう風に育てられ、女はそうした振る舞いをしたほうが今の世の中は得であると体験的に知っていて、我が子に苦労をさせない為にやっていたのだろう。
 しかし世の中は変わり「男は強くあるべし」「女は控えめであるべし」は薄れつつある。

 昔は男も今と違う意味で大変だった。男は家庭内では精神力の強いリーダーで家族全員に責任を持ち、養わねばならなかった。それを当然のように期待されて、稼げない男は無能呼ばわりだ。
 家族を路頭に迷わせない為に辛い会社でもひたすら我慢するという時代。(そりゃ性格曲がりそ)
 現代ではもっと生き方が多様で自由になったと信じてよいのだろうか。
 男が男であるというだけで飲食代を払ってやる時代は終わったみたいだが。

 私は自分の経験から自分の結婚だけは夫婦同等で、子供達はみな平等に育てようと心に決めていた。夫婦共働きなら家事も同等のはず、という理想が砕け散るのは結婚してみてからだった。
その話は後日。子供に関しては、幸か不幸か男の子にしか恵まれなかったのでそれなりに。

 何かの本に男と女は別の惑星から来た異星人だと思え、というのがあったな。言い得て妙である。同じ人間で、生殖器以外は同じパーツで出来ているのにこれ程までに考え方が違う。

 夫の友人達とは夫婦ぐるみの付き合いが多く、よく誰かの家に集まっていたが、押しなべて自分の妻には上から目線の物言いだった気がする。類友だったのかもしれないが、何かにつけて「こんなの事も知らないのか。仕方ない、教えてやろう」の態度である。友人の前で「妻に尻に敷かれてない」アピールかと思ったら、夫婦だけの時もそうだ。

 友人(男性)の一人が「男は犬だから」と言った。犬は出会った瞬間にどちらが上位か決め、下位は上位に従うという。だから自分より下位と認めた人間のいう事もきかない。
 これは群れ社会の動物の鉄則だそうだ。ハイエナなんか特に序列がキビシイ(序列は生まれた時決定してる)
 つまり直列思考軍隊集団でやるスポーツでは効率がいい方法だ。一人一人の都合や事情を考えることはできない。上位の命令を素早く実行しないと負けてしまうからだ。そのかわりリーダーの責任は重い。集団で狩りをしたり戦ってきた進化の名残り。

 それにくらべて女性は並列思考。子供や、妊婦という弱者を取りこぼすことがないようなコミュニティ作り。重視するのは年齢や能力だけでなく「どれだけ他者に貢献しているか」。
 その代わり何かを実行する際には時間がかかる。

 何かのスローガンによく使われる「一人はみんなの為に。みんなは一人の為に。」
 「一人はみんなのために」は直列思考を、「みんなは一人のために」並列思考をよく表している。
 どちらも必要で、ケースバイケースで使い分けをしなければいけないが、その線引きが個々で考え方が違うので難しいところ。

 夫婦間では「オレが上」と無意識にでも思っている(もしくは思いたい)男と「お互い同等」と思っている女とはかみ合わない。「夫婦は同等でしょ?上下関係持ちだす男が間違ってるんじゃないの?」と女性から反論がきそうだ。しかし「上」には女性には希薄になりがちな責任感が強いという面もある。(だから男性の自殺率の方が高いのよね)
 男性には守ってあげようという気持ちがあるかもしれないが、女性は手をつないで行きたいのだ。
 男性の守ってあげることへの憧れの強さはアクション映画みたらすごくわかるね~。残念ながら女性はルパン三世でいえば、カリオストロの城のクラリスでなく不二子になりたいってこと。守ってもらうだけのクラリスはその内、自分の無力さを嘆くだろう。

 とくに女性が不平等感を持つのは家事・育児においてだ。「イクメン」や「家事メン」ともてはやされているのはまだまだ珍しいから。年配の男性の中には今でも家事は女性がすべきと思っている人もいる。ある意味正しい。男は「それに適しているようにはできていない」から。

「えっでも料理でも家事でも男性にその道のプロはいるじゃない?」
 そう、お仕事ね。それだけしてればいいからね。家事は質より量だ。やるべきことが膨大にある。
完璧さは重要ではない。
 男性は概してシングルタスクが多いという。同時に幾つものことをするのは苦手だと。その点マルチタスクが多い女性は「掃除機かけながら、電話片手に友達としゃべり、時々ちらちらと子供の様子も見ながら、鍋が焦げている臭いに気づく」という男性には到底不可能なことが出来るという。
 また女性は近距離視野が広く、男性が冷蔵庫やタンスをのぞいて「無い無い」言ってるものを直ぐに探し出す。その代わり方向音痴だが。

 今更どちらも変えられない。何万年もかけてそうなったのだ。
 お互いの特性を理解した上で、上手にお互い隠して共存すべきとトシとってやっとわかった。
 男は「僕たちは同等だよね~。家事育児も(できる限りだけど)するよ」
 女は「素敵。頼りになるわぁ。(いろいろやってくれたら)尊敬しちゃう~」
 と言い合って暮らせば問題は少なくなるだろう。

 私はかって若く未熟で肩肘をはり「男女平等!」「夫婦同等!」とわめいていた。
 夜勤のある仕事で家事・育児で疲弊し、気持ちに余裕がなかったせいもあっただろう。
 今でも「男女平等」「夫婦同等」は間違っていないと思っている。
 ただ「平等」と「公平」は違うという。
 たとえば女性が苦手とする電気の配線や車のメンテナンスを「どうして出来ないのか」と言われるのと同じく、苦手な家事を男性に全く同じ分量を振り分けるのは「公平」ではないかもしれない。
 ただ役割や適正の違いを理解し(個々の違いもある。普通の女性より女性の特性が強い男性もいるだろう)あたかも職場の同僚のように適材適所で効率よく心地よく、家庭内の事もこなしていけたらなと願っている。

 最後に「長幼の序」の正しい解釈は、年長者は下を守り慈しみ、年少者は上を敬い従うこと。
 あの頃の兄は子供なりに私を守ることに責任を感じ、でも子供としての自分の我儘にも振り回され必死だったんだろうと思う。得てして守られているものは守られていることに気づいていない事が多いのだから。

 タイトルが節約術となっているが、今後はリストラ生活中の私のつぶやきも混じってきそう、です。
よろしければお付き合いを。

 それではまた次回。ごめんなさいませ~。

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