私は一人暮らしである。厳密には一人と一匹、9歳のオス猫と暮らしている。
うちの猫クリスは、元の職場の同僚が世話をした迷い猫が産んだ仔猫をもらい受けたもの。
同僚は白い小さな愛くるしい写真を見せるという手で、まんまと私を一目ぼれさせたのである。
猫を飼うのは2匹目だった。前回は真っ黒な迷い仔猫を飼ったのだが、5年目にして外遊びから瀕死の状態で帰ってきて、入院の甲斐なく死んでしまった。
その日の朝までは元気だったし、外傷も無かったので何か毒のようなものを食べたのかも、と獣医さんから言われた。
猫は一生ステイホームで
そもそも猫を放し飼いにしてはいけなかった。
猫は縄張り意識が強いので、あちらこちらに「ここは俺のもん」とマーキングする。
しかし、よそ様のお庭でトイレして大迷惑をかけるということだけではない。
猫の排泄物からトキソプラズマ症に感染する恐れがあるからだ。
トキソプラズマはブタ・牛・鶏・猫などの哺乳類に寄生する原虫で、それらの排泄物によって人間にも感染する。免疫力のある健康な人ならば、無症状か軽い発熱、リンパの腫れ位で済む。
問題なのは先天性トキソプラズマ症だ。妊婦がこれの初回感染で、胎児にも感染すると目や脳の障害や流産・死産に至るということがあるのだ。
自分ちの猫が外遊びでこれに感染し、家のトイレでの始末を妊婦がするとなると感染リスクが高くなる。だから猫を飼っている妊婦さんには猫トイレの始末は他の家族がするよう、産院では勧めている。
一応妊娠の初期検査でこれの感染の有無を調べるのが一般的だ。
それだけでなく、外に行けば何の病気をもらってくるか分からない。
一応去勢と予防接種をしてるからと言っても、外は危険がいっぱいだ。
たまに目を背けたい猫の交通事故もある(口の悪い知人は猫ミンチと呼んでいた。ヒドイ‥。)
だからクリスは放し飼いにはしなかったのだが、以前はスキをついて脱走することが何度かあった。
そしてある日、頬にえぐられたような傷を負って帰ってきたのだ。
このあたりにも野良猫を見かけるのできっと喧嘩をしたのだろう。去勢猫はそうでない猫より喧嘩が弱いと聞いたことがあるが、本当だろうか。
それ以来クリスがどんなに外に行きたいと鳴いてもリードなしでは戸外に出さなくなった。
100円ショップで買ったペット用リードを3~4本繋いで庭に出す。(あまり長いと絡まって大変)
ワンタッチタイプの首輪だと、ちょっと強く引っ張れば外れるとすぐバレて脱走されてしまったので、しっかりとしたベルトタイプを緩めに着けた。(これも頭抜けそうなんだけど抜かないのよね)
それでも長くは出さず、ちょこちょこ様子をみる。30分位を1日3~4回だろうか。
仕事の日は朝晩の2回だけだったが、私が長く家に居るようになったら「出せ出せコール」が増えた。
リードの届く範囲で縄張り確認(?)や草を食べたりしている。
困るのは時々外でウンチすること。まあうちの庭ではあるが。
以前テレビで、さだまさしさんが関白宣言の替え歌で『家の外に出してはいけない』と歌っていたのはそういう訳である。
猫だけではないが、ペットを飼うにはそれなりに手間とお金がかかる。
「可哀相。拾っちゃった」だけではすまない。
餌代、トイレ費用、メンテナンス費用、病院代。特に最後の病院代が保険がないので半端ない。
先代猫が亡くなる時は、あらゆる検査と処置をしてもらったので一晩で10万以上かかった。
外に出さなくて病気・ケガのリスクが低いので今までペット保険に入ってなくて、幸いにも大病せずにここまできた。しかしもう9才。保険に入れるギリギリラインに来ているので、さすがにそろそろ入ろうかなと思っている。
癒しと守護の猫サマ
クリスには随分慰められた。
仕事を失くした6月は世の中はまだまだ自粛ムードのステイホーム。
外に出るのは買い物ぐらい。週に1~2度誰かと会うことがあったが、どうかしたら4~5日誰とも会わず喋らずの日々が続いた。
それまでが「喋る仕事」だっただけに、「喋れない」ストレスは大きかった。
気持ちがどんどん滅入ってくる。クリスに話しかけるのも限界がある。
しかし何かの、誰かの世話をすることが支えになることがある。
そして彼は文字通り寄り添ってくれた。寝る前ルーティーンだ。
私は2階の寝室に寝る為に上がるときは、慌ててついて来る。(この時について行かないとしばしば寝室に入れてもらえないこともあったのでので。昔ね)
私がベッドに横になってもベッドサイドにちょこんと座り見上げている。
「にゃん(ベッドに乗っていい?)」
私が(いいよ)とベッドの上をトントンするとやっと飛び乗ってくる。
私の顔をじっと見つめ、(どうぞ)と腕を拡げると、おもむろに腕枕で添い寝状態に。
腕枕でもじっと私を見つめるクリス。どんだけ私が好きやねん‥。しばし見つめ合う。
しばらくその体勢で私は本を読むのだが(読みづらい‥。)もう自分の方を見てもらえない、もしくは私が目を閉じて寝たと思ったら(時々ウソ寝。体勢変えたい時とか)ベッドの足元の空きスペースへ移動し丸くなって朝までそこで寝ている。
これが何か月も続いている、私とクリスの夜のルーティーンである。
以前はベッドに上げなかった。猫の毛だらけになると思ったのだ。(今はコロコロ使用)
寝室に別に猫ベッドを置き、私のベッドに上がろうとしたら叱った。今でもベッドに上がるのにお伺いを立てるのはそのせいだ。猫って以外と(失礼!)頭がいいのね。
時々「かまってちゃん猫」になるのだが、胸に乗ってきては前足で私の顔を触ろうとする。
私が嫌がるのを知っているのだ。(だって足の裏で触られてるのと一緒じゃん?)
触るとすかさず私から軽く頭をはたかれるのが分かっているので、そろそろと前足を近づける。
『触ったらはたくヨ』とばかりに手を挙げると、そっと引っ込める。そして私の注意がよそに向くとまた触ろうとする。そして手が上がると引っ込め‥の繰り返し。
たぶん私は遊ばれているのだろうな。
クリスと一緒に寝るように変わったの私の人淋しさと怖がりのせい。
私は霊は見えないが存在は信じるほう。特にテレビとかでうっかりその手の怖いシーン(たとえ映画のようなフィクションでも)を見た日にゃ夜はビクビクもの。
また部屋が夜、ミシミシ煩いほどに鳴るのである。昼間猛暑で温められた部屋が、寝る時入れた冷房で急激に冷やされ軋んでいる音(そうだよね⁉ねっ⁉)だと思うのだが、鳴るたびにビクッとする。
以前(自称)霊能者が「霊は動物と子供が嫌い」と言っていたのにすがり、クリスを側に置くようになったのだ。若い時はよく金縛りにあったのに、そういえばここ数年無いな。
動物は死んだ後も霊になって飼い主を守るという(そんな人間ご都合主義な話ってどうなん?)
だが、先代の猫に守られていると思うだけで安心する。いや、人間のご先祖様にも感謝してますって。
クリスには壁紙をボロボロにされ、ソファーを壊され、家のあちこちで吐かれるが仕方ない。
猫なんだから。(スイマセン、最初は腹を立てて随分君を叱りましたね、クリス)
友人の猫が認知症の寝たきり猫になり、長きにわたる友人の介護の末今年15歳で天に召された。
いずれクリスにもそんな日が来る。
私の年齢的に彼が最後の猫になるだろう。クリスもきっとずっと私を守ってくれる。
彼との出会いに感謝。そしてすべての出会いにも。
彼に守られるに値する人間でいようと改めて思うのである。
それではまたね。ごめんなさいませ~。


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